東京都・新宿区では、区内の公立保育施設(民営施設を除く)・計15園にて、「おむつカンパニー」の導入を決めました。2023年1月には、しなのまち子ども園にて先行導入がスタートしています。
自治体として公立保育施設へのおむつサブスクを導入するに至った経緯、数あるサブスクの中からどうして「おむつカンパニー」を選ばれたのか。保護者・保育者双方の立場に寄り添い、導入に奔走された、新宿区子ども家庭部保育課の池田祐介さんにお話をおうかがいしました。
他の自治体や私立園でのおむつサブスク導入事例を目にするようになり、「新宿区も公立園で導入してみたらどうだろう」と考えたのが最初の入り口です。
利用する保護者と保育者の利便性があがるものなら、という思いはもちろんのこと、私自身の子育て経験から、いち保護者の視点に立って「こんなサービスがあったら良かったのになぁ」と感じていたのも、導入に向けて動いたきっかけのひとつです。
まずは「おむつのサブスク」について各園に周知を始めたのですが、実は最初の園側の反応は、正直あまり良いものではありませんでした。
みなさん、園内のオペレーションがガラリと変わることに対して、不安感があったように感じます。具体的なところだと、届いたおむつの保管場所はどうするのか、園児たちのサイズ把握は面倒にならないのかなど、さまざまな未知なことに対して、ネガティブな意見も聞かれました。
ただ、担当者としては、利用する保護者だけでなく保育者も楽になるサービスだろうという確信があったので、丁寧に説明を重ねていきました。
サブスク業者の選定は、園にお願いをすることにしました。各サービスの比較表を作って園に提示したり、実際の保護者の声も聞いていただいたりして、調整をしてもらうことにしたのです。
「おむつカンパニー」が選ばれた理由としては、金額と品質のバランスが良かったのではないかと思います。保護者からすれば重要な点ですし、保育者側としても、加入者が多いほど現場の負担が軽くなります。配送の箱数などの現実的な条件も加味して、園側から「おむつカンパニー」が最終候補に挙がってきた、という経緯です。しっかりとしたトライアル期間があるのも、導入までの安心につながったと感じています。
最初は不安だった現場の保育者たちから、数日ですぐに「楽になった!」という声が届いて、安心しました。保護者からは、ミラフィールのおむつの品質について、肯定的な意見が寄せられました。一度触ってみて、「これならば」と納得していただいた方が多かったと聞きます。また、もともとミラフィールをご存知で、「ミラフィールのおむつをサブスクで入れてくれるんですか?」と喜んでいる方もいたようです。
しなのまち子ども園の園長先生は、「うちでやってみたい」と最初に手を挙げてくれました。保護者の方にも丁寧に説明をし、園内のオペレーションを整えたり、保育者たちの意見をまとめたりしていただいています。
また、公立園は横のつながりが強く、園長先生同士で情報共有をしていただいているようです。しなのまち子ども園から導入後の様子などを伝えていただいたことで、他の園も不安なく導入に向けて動けたと思います。先行導入で早々に「楽になった」という声が出たので、他の園でも進めていけるな、と実感しました。
担当者としては、より良い子育て環境のために、保護者や保育者の視点に立って寄り添いながら進めていったつもりでいます。ただ、園長先生方からは、不安があっても保護者のためになるならやるんだといった声があり、現場のそういった姿勢が一番大きかったと思います。
以前、同じようなスキームで公立園に写真のネット販売業者を入れることになった際、個人情報の扱いが議題にあがり、「Pマーク(プライバシーマーク制度)」の取得を必須としました。
決済情報を保護者が入力したりするので、どういう事業者ならセキュリティを担保できるのか。区が契約に直接かからわらないため、業者にはしっかりとした条件を設けています。今回のおむつのサブスクについても同じ水準です。
現在、しなのまち子ども園ではトライアル終了後も8割の方が「おむつカンパニー」に加入しています。加入されていない方は、保育時間が短い、おむつを買いだめしてしまったといったご家庭のようです。まだ導入が始まったばかりですので、新入園児も含めどれだけの加入率になるのか注視しているところです。
「おむつのサブスク」は、保護者が実費負担をするため契約は任意ですが、園側の立場としては、加入率が高くなるほど負担が軽くなります。保護者には1か月無料トライアルでまずはサービスを体験してもらったうえで、契約をするかどうかの判断をしていただければと考えています。また、オペレーションなどの面で園に対して後方支援ができるよう、工夫しながら進めているところです。
自治体の観点で言えば、公費負担をせずに利用者サービスの向上が実現できるというのがこの「おむつサブスク」の気軽なところだと思います。予算が必要な事業は、基本的には早くても翌年度以降の事業開始となります。保護者と事業者の直接契約の場合、組織や保護者などのコンセンサスが取れれば迅速に実現することができるので、着手してよかったと感じています。サブスクで保護者と保育者が楽になれば、と思いますし、必要がなければこれまでどおりおむつを持参していただくこともできるので、誰に対しても損することのないサービスです。
余談ですが、「おむつカンパニー」のおしり拭きについて、園からも保護者からも好意的な意見が続々と寄せられてきています。大判で、柔らかくてしっかりしていて、「ぜひ自宅でも使いたい」、「手口拭きとしても使いたい」という声が届きます。
一方で、導入時の不慣れやおむつの使い方などについて、改良すべき点などにも耳を傾けてくれていると感じます。「おむつカンパニー」の担当者の方は、良いことも、悪いこともしっかりとヒアリングしてくださり、園の意見を受けて、メーカーの開発の方と品質改良にも取り組んでくれました。今後より良いサービスになるものと期待しております。